hujiru12’s blog

観劇感想ブログです。

YAJIKITA1〜浮世道中夢ん中之巻〜【再演】(2023.1.7昼、1.8昼)

ゴヤ座の滑稽歌舞伎YAJIKITA1、これが再々演になりますが、さすがナゴヤ座、ただの再演ではなく、思いっきりパワーアップして戻って来ました!

出演人数も増えて、笑いも立ち回りも特盛の演目になっていました。

特に二幕はガラッと変わっていて、懐かしいキャラにほっこり嬉しい気分になりつつ、初めて観る作品を味わうドキドキも感じられて、一粒で二度…いや、十度ぐらい美味しい。さすがナゴヤ座!

 

配役(1.7、1.8共通)

弥次郎兵衛→名古屋参駄右衛門さん(ダエさん)

喜多八→名古屋山之助さん(サンスケさん)

 

【OP】

借金取り→名古屋虎三郎さん(トラザさん)、名古屋参永已さん(サンエーさん)、名古屋参十郎さん(ジューローさん)、名古屋参笑太さん(ショータさん)、名古屋参太郎さん(タロウさん)

 

ダエさんの講談師から弥次さんへの変身が、めちゃくちゃカッコイイ!

ちょい見せでやっていたやり取りも取り入れられていて、懐かしい気持ちで、ニコニコしちゃいました。

ちょい見せもまた復活すると良いなぁ。商店街の店先で繰り広げられるお芝居って、すごくワクワクする光景で、大好きです。

新しいヤジキタダンスも、可愛くてウキウキしますね! ちゃんと覚えて、お伊勢さんで踊るのを今年の目標にしたいと思います!

 

【暗闘(だんまり)の宿】

護摩の灰(アニキ)→トラザさん

護摩の灰(弟分)→ショータさん、タロウさん

宿屋の主人→サンエーさん

 

サンスケさんが、サイン列でお話ししてくれた言葉で印象に残っているのが、「初役(ナゴヤ座では主役も含めて全役配役チェンジがあるので、その役を初めて演じること)を演る時は、俺はかけ蕎麦になるようにしてる」というものです。

他の役者さんが海老天やお揚げや色々な美味しい具を乗せて来るから、自分は、出汁の味も蕎麦も変わらない芝居を提供する、という意味だと教えていただいて、めちゃくちゃカッコイイな!と感動しました。

その言葉の意味を、今回の再演YAJIKITAを観て、めちゃくちゃ実感しました。

サンスケさんの変わらない喜多さんがいるから、お帰りなさい!という気持ちになれるんだなぁと、すごく胸熱でした。

 

今回、初参加のショータさん、タロウさんの護摩の灰弟分コンビ、最高でした!

元々一人だった弟分がもう一人増えたんですが、二人の性格の違いが面白さを倍増させていました。初っ端から腹筋千切れるかと思った…

タロウさんが演じた弟分は、サンキューさんの印象が強いんですが、完全に新たな面白さを作り出しているタロウさんの凄さに震えました。

コメディー方面にもこんなに才能があるなんて…まだまだ知らない爪が出て来そうで、ゾクゾクしちゃいます。

えっ、まだ、研修生なんでしたっけ!?!?

 

久しぶりに見たトラザさんの護摩の灰(アニキ)が、はちゃめちゃに渋カッコ良くなっていて、登場した瞬間に心臓が口からジャンピング家出しそうになりました…危なかった…

見えているのに見えていない気配斬りの動きができちゃうの天才で、めちゃくちゃ面白かったんですが、同時にめちゃくちゃカッコイイから、情緒が大変です。

ほっかむりしているのにカッコイイって、どういうことなんですか!? ありがとうございます!

 

【腹痛の宿】

宿屋の主人→トラザさん

医者→タロウさん

産婆のおシカ→サンエーさん

坊主の雲珍(ウンチン、漢字は予想)→ジューローさん

 

トラザさんの宿屋の主人がカ…………ッコ良すぎて、心臓止まるかと思いました。危ない…!(二回目)

サイン列のお話で、トラスケさんに「シェフみたい」と言われたと仰っていたんですが、確かに、こういうイケメンフレンチシェフいます。オシャレなフルコース出してくれそう。

 

タロウさんが凄すぎて、度肝を抜かれました。

めちゃくちゃ面白いし、回を重ねる毎に更に面白くなって行くし、自由に遊んでいるように見せつつ、本筋に戻って来るタイミングも抜群だし、えっ、研修生なんですか!?!? ほんとに!?!?(二度目)

ボケ倒すけど憎めない可愛いおじいちゃんを、二十代前半の若者が演じてるんですよね…この完成度の高さは何事…?

 

サンエーさんの産婆のおシカさん!

登場した瞬間に「待ってましたー!」とオオムコウを飛ばしたくなるサンエーさんのハマり役の一つ、久しぶりに観れて、めちゃくちゃ嬉しかったです!

笑いを掴みまくったタロウさんの医者の後に登場して、更に笑いを取って行くサンエーさん、さすが過ぎます。

前回、バカウケした役を再度演じて、更に面白くなってるってすごいことだと思うんですよ。天才だぁ…!

 

そこに、今回プラスされた坊主のジューローさんが、お経で絶妙な合いの手を入れて来るの、本当にヤバいです。笑い過ぎで死ぬかと思いました…!

ジューローさん、リズム感、めちゃくちゃ良いじゃないですかー!

 

ダエさん、サンスケさんが、弥次さん喜多さんをガチッと固めているからこその、若手組の笑いの爆発っぷりなんですよね。

初演時から比べて、ナゴヤ座のお芝居のバランス感の進化っぷり、凄いな…と思いました。

毎公演進化を続けて行くという意味を、こうして振り返ると、身をもって体感します。

 

【川越人足銭渡し】

人足(豪傑組親分)→ジューローさん

人足(豪傑組)→サンエーさん

人足(雷蔵組親分)→ショータさん

人足(雷蔵組)→トラザさん

 

再演時に登場した話ですが、今回の再々演で、ガラッとストーリーが変わっていました。

なので、初めて観た作品として、思いっきり笑いました。真っ直ぐ座っているのが苦しいので、転がるスペースが欲しいです…っ

 

前作の風来ボウイロスを吹き飛ばす座作品パロ(スピンオフ?)大好きです!

作品同士の繋がりを作ったり、パロディーのネタにしたり、作品数が増えたからこその遊びが見れるの、歴長めのナゴヤ座ファンとしては、にっこりしちゃう嬉しさです。

 

粋で鯔背という言葉が一番しっくり来るのがダエさんの弥次さんだと思うのですが、そんな弥次さんのあんな姿を見れちゃうとは…なんだかいけない秘密を覗いた気がしてドキドキしちゃいました。

 

風来ボウイ終盤でショータさんの雷蔵親分が実現したから、このジューロー豪傑vsショータ雷蔵の人足縄張り争いが観れたんだなぁと思ったら、ちょっと感動しちゃいました。

自分から雷蔵を演りたい!と売り込んだショータさんのガッツ、カッコイイし、それでちゃんとめちゃくちゃ面白い雷蔵親分を出せるのが、凄いんですよね!

 

サンエーさん人足の仁義の切り方に、サンエーさん石松を思い出して、ヒャー!ってなったし(客席からヒャー!の声が聴こえて、解ります!って握手したくなりました)、ジューロー親分のズンズンドッコ♪や、ショータ親分のヒャーハー!ナナちゃんがまた観れたのも嬉しかったです。

 

そして、トラザさん人足の見事な肉体美に、ふぁぁ…と見惚れてしまいました。

めちゃくちゃ綺麗な逆三角形の上半身に、腰の位置がめちゃくちゃ高い脚の長さに、水泳帽を被った頭の形まで美しい…って、どういうことなんでしょうか!?

片脚上げ拳腕立て伏せができちゃうの、カッコ良過ぎて、感動しました…!

 

トゥーランドットの布演出をすっかり自分達のものにして、川渡しの臨場感出してるの、さすがだなぁっておっきい拍手したくなりました。

余談ですが、布を動かしてる時の座員さんの真剣な横顔、めちゃくちゃカッコ良くないですか? こっそり眺めて、ドキドキしちゃってます。

 

【夢の宿】

腹出し→ダエさん、ジューローさん、ショータさん、タロウさん

鎌倉権五郎→トラザさん

 

夢の中で、喜多さんがクビになった一座に一泡吹かせてスカッとする、という流れは同じですが、演じられる歌舞伎の演目が変わりました!

 

浅学ながら、暫の名前は聞いたことがあっても、その内容は知らなかったのですが、観劇後に検索したら、鎌倉権五郎は、子どものような無邪気さも持つ江戸っ子憧れのヒーローで「力強く荒削りな男性が、ときに少年っぽさを見せる姿は、女性の心を強く惹きつける」と書かれていて、「トラザさんじゃん!」と、麺和さん(ナゴヤ座の下のめちゃくちゃ美味しいオマール海老つけ麺屋さん)で叫びました。

 

カニ道楽と言われちゃう大きな鬘を付けて演じられているのですが、上半身を全くぶれさせない姿勢で刀を避ける体捌きや、速度を増しても軸のぶれない回転など、体幹が鉄筋製なのかな?って思ってしまう美しさです!

「しーばーらーくー」のつらねの声の張りや通りも最強にカッコ良くて…ありがとうございます。大好きです!

 

腹出し四人の台詞回しや見得の切り方は、歌舞伎要素がしっかり出ているのに、そこに絶妙なバランスで現代的なコミカルさが混ぜられて、全部を聴き取れてはいないにしても、ちゃんと台詞の意味は理解できるのが、すごいなぁと思います。

これぞナゴヤ座のナゴヤ歌舞伎!という真骨頂を見た気がする満足感です。

伝統的な言い回しをあまり崩さないダエさんから、現代的な面白さを出すショータさん、タロウさんにバトンを繋ぐジューローさんのバランサーとしての巧さに、感動しました。今のナゴヤ座のバランス、本当に最高ですね!

 

歌舞伎的な立ち回りと、バッチバチのアクションのスピード感を混ぜた殺陣も天才でした!

あの鎌倉権五郎をバシッとカッコ良く演じつつ、最後は、ヒーローものの敵役みたいにやっつけちゃうはちゃめちゃさに、ナゴヤ座の技量と度胸の凄さを感じます。

 

これを良い機会に、歌舞伎の暫を観に行きたいなぁという気持ちになってます。

ゴヤ座は、伝統芸能への敷居を越える階段を作ってくれる場所ですね!