hujiru12’s blog

観劇感想ブログです。

サンキューの日に名古屋参九郎さんについて書いてみた

3月9日はサンキューの日!

当日までに書き上げられませんでしたが、カブキカフェナゴヤ座(http://nagoya-za.com/)のベテラン組座員、名古屋参九郎さんについて書いてみます。

オオムコウ(歌舞伎などで役者に向かって飛ばす屋号や「ご両人!」という声援)は「サンキュー」座員カラーは黄色です。

 

ゴヤ座に加入したのは、2017年1月。2016年末に名古屋山平太(ペータ)さんが卒業されて、座員が座長の名古屋山三郎(サンザ)さんと名古屋山之助(サンスケ)さんの二人になってしまったナゴヤ座。どうなってしまうんだろう? とハラハラしていたら、名古屋参駄右衛門(ダエモン)さん、サンキューさん、名古屋参十坐(トウザ)さん、名古屋参次郎(ジロウ)さんの4名が加入して元の倍の人数に!(ジロウさんは、現在、ご卒業されて東京でご活躍されています)

ゴヤ座オープン時からのメンバーであるサンザさん、サンスケさん、ペータさんは、サンザさんが一枚目(座長だけど、当時の演目「月読」の主役を演じる役者なので、八枚目ではなく一枚目のはず…)、サンスケさんが二枚目、そして、ペータさんが三枚目の役割を担っていました。

ペータさんが卒業されて空き枠になってしまった三枚目のポジションを担うことになったのがサンキューさん、というイメージでした。

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当時やっていた演目が「YOSHITSUNE」で、サンキューさんがメインで演じていたのが、ナスノヨウイチ(義経、弁慶には「与一」と呼ばれる)という現代から義経、弁慶の時代にタイムスリップして来た男の役でした。

そして、その次が、「TORA-NO-O」の梶原景時の使者と兼役の平知盛

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与一や使者役では、お芝居を掻き回す役割を120%果たしてくださいました。ペータさんが野生の打ち上げ花火みたいな方だったので、その笑いのポジションを担うのはすごく大変なことだったと思うのですが、負けない爆発力を見せるサンキューさんの頼もしさに、ナゴヤ座のお芝居がますます面白く予感でワクワクしました。その予感は、完全に現実になりましたね!

サンキューさんは、色々なことをしっかり考えたうえで立ち振る舞いの仕方を決めるクレバーな方だと思います。だけど、自分のポジションがそこだと思い定めたら、全力でクレイジーになることもできる。それって、とてもすごい能力な気がします。

 

サンキューさんのお芝居の魅力は、三枚目としての面白さだけではありません。

平知盛役で感じたゾクッと来る悪役の空気感を、より強く感じたのが、「BENTEN the KID」の浜松屋幸兵衛です。手下に拷問させてボロボロになった日本駄右衛門を踏み付けて、その信念を嘲笑う姿は、底冷えする恐ろしさを感じました。

サンキューさんは、三枚目役として、イベントなどでも客いじりなどぶっ込んで行く破天荒さを見せてくれますが、その素顔は、しっかりとした考えを持ち、舞台の上の仲間の役者達の様子だけでなく、ファン達の様子まで目を配る視野の広さがある、誰よりも大人な方です。

その多方面に気遣いのできる優しさが滲み出しているからこそ、悪役を演じる時のギャップが背筋をゾクゾクさせます。そして、善から悪へと瞬間的に切り替えるお芝居が、とんでもなく上手い。一人の人間が持つ表の顔と裏の顔のどちらもに、違和感なく説得力を持たせられる巧さに、心拍数が上がります。

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サンキューさんは、市川智也さんとして、スポーツの試合のMCなどでもご活躍されていらっしゃいます。その経験は、ナゴヤ座のお芝居の中でも活かされまくっています。

客席の全員を、単なる傍観者ではなく、物語の中に取り込んで、左膳の生き様を一緒に見届ける登場人物にさせる力を持つサンキューさんの「SAZEN」の講談師に、心の底…魂から震えました。

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「開門!」の声だけで場面転換をさせてしまうサンキューさんの凄さをより強く感じたのが、極上ナゴヤカブキ(ちくさ座という広い円形劇場で行われるナゴヤ座の外部公演)1の「斉天大戦」です。

サンキューさんが演じた混世魔王(通称混ちゃん)は、殿堂入りナゴヤ座キャラの一人です。その混世魔王が登場するだけで、舞台転換をしたように場面が変わったり、物語が別の方向に流れ出したり、ちくさ座の広い舞台を動かしてしまう。

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その凄さは、「DOMAN」、「虎の尾」と、その後の極上ナゴヤカブキ作品でも発揮され、サンキューさんの存在は、無くてはならないものになっています。去年の夏の公演「虎の尾」([DVD]極上ナゴヤカブキ4「虎の尾 -YOSHITSUNE & BENKEI-」 | NAGOYA za NET shop https://thebase.page.link/taJg)では、源頼朝の使者を演じ、語りだけでちくさ座を壇ノ浦の海に沈めました。

見る人をホッとさせ、自然と一緒に笑ってしまうパワーを持つサンキュースマイル(目尻の皺がとってもキュートです)は、とてもステキです。だからこそ、それがスッと消えた時、一瞬で場の空気が変わります。声の調子の変え方もめちゃくちゃ上手く、そこにこの表情の変化が加わると、暗転やセットの移動をしなくても、舞台の色が変わってしまう。サンキューさんという役者さんの凄さを、心底感じます。

 

サンキューさんの演じる悪役の魅力について語りましたが、「THE NARUKAMI」の絶間や、「風来ボウイ」の森の石松という主役を演じる時の真っ直ぐな熱さにも、ストレートに惹きつけられます。

何かを守ろうとがむしゃらに挑んで行く姿を見ると、がんばれー!って大声で応援したくなっちゃうし、敵に勝った時には、良かったねー!って掌が痛くなるぐらい拍手したくなります。

仲間と力を合わせて、一人では勝てない相手に戦いを挑む。少年マンガの王道主人公を演じさせたら、サンキューさん以上に似合う方はいないんじゃないかと思ってしまいます。

サンキューさん、可愛らしくも凛々しくもなれる整ったお顔立ちをされていらっしゃると思うのですが、「普通」に見せるのがめちゃくちゃ上手いんです。それに、殺陣の基礎をしっかり身に付けていらっしゃるから、立ち回りの動きで、強い悪役にも、今まで刀を握ったこともない与一のようなキャラにもなれてしまう。

サンキューさんの作り出される空気で、お芝居の中の世界のキャラクターが、身近に存在する人間のように感じられる。そのお芝居に、サンキューさんの中にある熱い気持ちが乗っかるから、客席皆が、がんばれーっ!って応援しちゃうんだと思います。

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私は、名古屋人でありながら、おもてなし武将隊界隈についてはとんと疎いまま過ごして来てしまいましたが、サンキューさんと、同時にナゴヤ座に入ったダエモンさんは、名古屋城の方で器となっていらっしゃった頃から名コンビ(ダエモンさんのお世話をできるのはサンキューさんだけというのが、お二人を知る方々の共通認識のようでした)でした。

サンキューさん、ダエモンさんご本人は、お互いを「嫌い」と言い合っているけれど、ピタリと息が合ってしまうから、「ビジネス不仲」と言われております。

実際のところのお二人の仲良し度は分かりませんが、ダエモンさんとサンキューさんが相棒役を演る時のしっくり感は、ずば抜けています。

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お互いに相手が演りたい方向性を肌で感じ取ることができて、それに対して自分がこう返したら面白いという計算を瞬時に弾き出せるから、安定感も笑いの瞬発力もめちゃくちゃ高いお芝居になる。ダエモンさんもサンキューさんも「演りやすい」と感じていらっしゃるのが伝わって来ます。

お芝居に対する熱量が同じぐらい大きくて、次はこういう風に演じてみようという挑戦意欲を持ち続け、細かいところにまでこだわる職人肌の役者魂を持ち…という歳の近い相手が近くにいて一緒の舞台に立てることは、かなり奇跡的なんじゃないかと思います。そんなお二人の共演を観れるって、とても幸せなことです!

ゴヤ座の中でも、最年長組のお二人が全力のお芝居を見せてくださるから、他の座員さん達にもスイッチが入り、板の上の熱量がぐっと上がる感覚、すごく胸が熱くなります。

 

プライベートのサンキューさんの、息子ラブなパパっぷりも、とてもステキです。Instagramhttps://www.instagram.com/p/CppkmnXJqmP/?igshid=MDJmNzVkMjY=)やTwitterhttps://twitter.com/tomoya_moya/status/1610399900667351041?s=46&t=QeBl-pbizSofy_jCZaRH8A)で、息子さんとの微笑ましいお写真を見せてくださるので、ニコニコしちゃいます。

 

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実は同い年のサンキューさんのご活躍を、これからも応援してます! お肌つやつやで、喜多さんおちょんぼも似合ってしまう奇跡の四十代男子に負けないよう、私もスキンケアがんばります。サンキューさん愛用のちふれ、使ってみようかな?