hujiru12’s blog

観劇感想ブログです。

サンエーの日に名古屋参永已さんについて書いてみた

3月8日はサンエーの日!

カブキカフェナゴヤ座(http://nagoya-za.com/)の座員の一人、名古屋参永已さん。オオムコウ(歌舞伎などで決め場で役者に掛ける声)は「サンエー!」。座員カラーはオレンジ。

若手座員のイメージが強いサンエーさんも、いつの間にかもう三十代なんですね…ちょっと感慨深い。

私が初めてサンエーさん(当時はゲスト出演だったので、永田祐己さんのお名前で出ていらっしゃいました)をお見かけしたのは、髑髏城の七人〜season月・下弦〜にご出演のため東京に行かれる座員の名古屋虎三郎(トラザ)さんと名古屋虎之助(トラスケ)さんの壮行会でした。

現在名古屋参十郎(ジューロー)を襲名されているごとーあきらさんと、研修生名古屋参吉さん(現在はご卒業されています)と共に、トラザさんトラスケさんが長期不在となるナゴヤ座のお助けマンとして紹介されました。

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ファーストインプレッションは、「近寄り難い」でした。

だって、見てください。この一人発光しているような存在感。神の御子なのかな?ってオーラですよ。

お顔めちゃくちゃ綺麗だし、オシャレだし、私より体重軽そうだし、瞬時にイケメン見知り発動です。

その後、ザバナシ(ナゴヤ座のトークイベント)などで、演出家の右来先生にダメ出しされてかなり苦労された裏話を知りましたが、舞台を観ている側からは、お芝居をサラッとこなしてしまう器用な役者さんに見えていました。だから、余計に近寄り難い印象を抱いてしまっていました。

 

サンエーさんが名古屋参永已を襲名してナゴヤ座座員入りしたのは、ナゴヤ座が二周年を迎えて1ヶ月ほど経った2018年5月。

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サンエーさんの凄さを感じたのが、円頓寺商店街に散らばった「SAZEN」のキャラクター達を捕まえようというイベント(ナゴヤ座ハンティング)です。サンエーさんの剣精がポーズを取った瞬間、見慣れた路地裏の光景が「SAZEN」の世界に繋がったような感覚に包まれたんです。

お芝居の空気を作るのがめちゃくちゃ上手い役者さんなんだな、と感動しました。

 

そして、更なるサンエーさんの凄さを知ったのが、ナゴヤ座が三周年記念で「TORA-NO-O」の再演をした時。サンエーさんが、それまで座長の名古屋山三郎(サンザ)さんが演じて来た富樫左衛門尉を演られたんです。

極上ナゴヤカブキ「虎の尾〜YOSHITSUNE&BENKEI〜」をご覧になられた方なら分かると思いますが(ご覧になっていない方は、こちらでDVDが買えます![DVD]極上ナゴヤカブキ4「虎の尾 -YOSHITSUNE & BENKEI-」 | NAGOYA za NET shop https://thebase.page.link/taJg)、ネタバレになってしまうので細かくは語れないのですが、物語のクライマックスシーンの怨霊に操られた富樫の立ち回りって、めちゃくちゃ難易度が高いんです。殺陣技術を学んだことのない素人である私の目にも、凄い動きをしていることが分かる…それぐらい凄い立ち回りです。

アクションのプロのトラザさん、トラスケさんは別として、こんな動きができるのはサンザさんだけだと思っていました。だけど、サンエーさんは、見事に、サンエーさんの富樫を演じられました。

この役で、サンエーさん独自の殺陣の色がはっきりと見えた気がします。最初に演った時は、サンザさんと同じ路線の立ち回りだったのですが、二回目でガラッと変えてサンエーさん色を出して来た…

サンエーさんの動きの凄さって、バネの強さとウェイトの軽さを活かした高い跳躍力と、ギアを初手でトップに入れてしまえる瞬発力から来ている気がします。それを活かしたサンエーさん富樫の立ち回りは、サンザさんの亡霊みを感じる肉体の重力を消した動き(あれができるのはサンザさんだけな気がします)とは違う、人としてのリミッターを無理矢理切られた獣じみた迫力がありました。

サンザさんのサイン列で、ナゴヤ座の座員さん達のすごい成長っぷりについてお話をすると、サンザさんが「めちゃくちゃ上手くなった」と必ず褒めるのが、サンエーさんの立ち回りです。

サンザさんとトラザさんがバッチバチに闘っているところに三つ巴で入って行っても同じスピード感で合わせられる勘の良さもとても凄いですが、それ以上に、サンエーさんの立ち回りには、「どうしてこういう戦い方をするか」の感情や背景までも見えるところに強く惹きつけられます。サンエーさんの立ち回りの進化は、技術の進化という以上に、お芝居の表現方法を広げて行って出来上がったものという感じがします。

 

サンエーさんの即トップギアに入る瞬発力の凄さは、立ち回り以外のお芝居にも感じます。

こうやってみよう!という閃きを、その場ですぐに演じ方に反映させて、ナゴヤ座のマスコットキャラ的な存在になっている「Macbeth」のシモンちゃんや、「YAJIKITA」の産婆のおシカさんなどのハマり役を生み出す。サンエーさんのお芝居の凄さの真骨頂な気がします。

そして、笑いの爆発力がありながら、何度観ても飽きずに愛してしまう。瞬発力だけではなく、作り上げたものを同じ味で、しかもどんどんと旨みを凝縮したものにして行く持続力もある。サンエーさんがラーメン屋をやったら、めちゃくちゃ流行るんじゃないかと思います!

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お婆ちゃん繋がりで奪衣婆さん。サンエーさんの奪衣婆さんも、舌をレロレロ動かしながら迫って来るクレイジーさが最高です!

シモンちゃんは、こちらをご覧ください(https://youtu.be/rnuoXgSnzGY)。「Macbeth」というシェイクスピアの悲劇がベースになった作品から生まれたとは思えないキャラクター性は、ぜひ動く姿を見ていただきたい!

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サンエーさんは、めちゃくちゃ綺麗なお顔立ちをされていらっしゃるんですよ。「 BENTEN the KID」で演じられた浜松屋の若旦那っぷり、最高にハンサムでした。赤星十三郎役も、皆が見惚れる美しさでした。

とらかめ(トラザさんが撮るお写真)の最初のモデルに選ばれたのも道理な、雰囲気のあるイケメンなんです(https://www.instagram.com/p/CBFTh5wpojo/?igshid=MDJmNzVkMjY=

なのに、全力で婆さんにも実写版黒ひげ危機一発にもなってしまう。この振り幅の広さというか、笑いを取る時には全力でやり切ってしまうカッコ良さは、ナゴヤ座の座員さん皆持っていらっしゃるんですが(全力をイケメンをかなぐり捨てて行くイケメン達、最高に大好きです!)、サンエーさんのオンとオフの温度差はずば抜けています。

 

サンエーさんは、サンエーさんにしか出せない空気を纏っている役者さんだと感じます(私の勝手なイメージとしては、白梅が咲き始める初春の頃の肌寒い朝の陽射し…みたいな透明感と柔らかさを感じる空気です)。

だからなんでしょうか。悲劇「Macbeth」の主人公魔苦減須や、「Turandot」の全てを失ってしまうトゥーランドット姫みたいな重い役を演じても、暗闇だけではない希望に向かう一筋の光が見えるように感じます。それも、サンエーさんの持つ凄い才能の一つだと思います。

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一つの役をいろんな座員さんが演じる配役シャッフルが、他にはなかなかないナゴヤ座のお芝居の特徴ですが、どの演目でもサンエーさんが一番多くの役を演るというのが、お約束になって来た気がします。その役をいろんな役者さんが演じて来た後、千秋楽間際で四番手、五番手のキャラ作りをする。そのプレッシャーと難しさは、素人である私にも分かります。

だけど、サンエーさんは、そういう切り口があったのか!という役作りで、ロングランの作品の新しい魅力を見せてくれる。それは、きっと、サンエーさんが、今演じている役以外のキャラクターも、自分が演るならどうするかを常日頃から考え続けているからできることなんだろうなと思います。

お芝居を観ても、イベントなどでのトークを聴いても、サンエーさんの頭の回転の速さには驚かされますが、そこに、配役シャッフルで磨かれた、別の登場人物からの視点にも切り替えられる視野の広さが加わって、今では「サンエーさんが居れば大丈夫」という頼もしさを感じるバランサーになっています。

若手組として自分自身もガンガン挑戦しながら、しっかりと脇を固める役割も果たせる。サンエーさんの凄い進化のおかげで、お芝居の支柱役となっていた座長のサンザさん、副座長の名古屋山之助(サンスケ)さん、最ベテラン座員の名古屋参駄右衛門(ダエモン)さんとかが好きに遊ぶお芝居も観れるようになって、ナゴヤ座の舞台の面白さが更に広がりました。

本当に、ナゴヤ座には絶対必要な存在です!(どの座員さんもそう思えるのが、ナゴヤ座のすごいところですが…!)

 

サンエーさんの口上に「御池の鯉」というフレーズがあるのが、最初に聞いた時は少し不思議でしたが、よく考えてみると、「鯉」ってサンエーさんにすごくピッタリな生き物なんですよね。

鱗によって、華やかな主役の錦鯉にも、黒子役の真鯉にもなれる。胃が無いからいつも腹ぺこな鯉みたいにお芝居に貪欲で、どんな役でも飲み込んで自分のものに消化しようとする。そして、川を登って龍になるポテンシャルを持っている。すごくサンエーさんな生き物です!

 

涼しげなお顔立ちや、淡々とした落ち着きのある喋り方から、一見クールで近寄り難い印象を持ってしまいがちなサンエーさんですが、内側には熱い役者魂を宿したカッコイイ漢です。

ファッションやバイク、車の趣味も、ベーシストなところも、スタイリッシュな見た目に反した男臭さで、そういうギャップも魅力の一つです。

知れば知るほど、ジワジワと内面のカッコ良さが出て来るサンエーさん。これからも、若手組エースとして、たくさんの挑戦を観せてください!

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角が生えてても、めちゃくちゃイケメン!