hujiru12’s blog

観劇感想ブログです。

サンザの日に名古屋山三郎さんについて書いてみた

3月3日はサンザの日ー!

カブキカフェナゴヤ座(http://nagoya-za.com/)の名古屋山三郎一座の座長、名古屋山三郎さん(座員カラーは紫)について書いてみたいと思います。

サンザというのは、名古屋山三郎(なごやさんざぶろう)さんに対して飛ばすオオムコウの呼び名です。オオムコウは、歌舞伎なんかで役者が決めた時に掛ける「ヨッ、成田屋!」とか「ご両人!」とかの声援です。ナゴヤ座では、お芝居中にそのオオムコウを飛ばすことが推奨されています(ご時世柄、マスク着用の上での発声です)。

名古屋山三郎というのは、戦国一の美少年と言われる武将で、歌舞伎の親との説もある実在の人物です。サンザさんは、その名を冠するに相応しい美しいお顔立ちをされています。

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見てください。この日本人離れした彫りの深さ、美しい鼻筋、彫刻のような輪郭、長い睫毛!

一座の座員である名古屋虎三郎(トラザ)さんが撮るお写真(通称とらかめ)のサンザさんが最高潮に美しいので、こちらでその美をご堪能ください(https://www.instagram.com/p/CW6Tg3_hRmn/?igshid=YmMyMTA2M2Y=)。

 

サンザさんの魅力を一言で表すと、硬派な妖艶さだと思います。相反する言葉のように思えますが、お芝居に対するストイックな掘り詰め方、粋な漢気を体現する名古屋山三郎というキャラ作り、そこから生まれる人間離れした妖しさと、女も男も魅了する艶、その老舗の鰻屋の秘伝のタレみたいな味わいが、サンザさんの魅力(ある意味魔力?)です。

 

私が初めてサンザさんのお芝居を観たのは、6年4ヶ月前。美容院で渡されたcheekに円頓寺商店街特集の記事が載っていて、そこで見たサンザさんの写真に、めちゃくちゃ綺麗なお顔の役者さんがいるんだなぁと興味を惹かれ、ナゴヤ座に足を運んだのがきっかけです。

その時に演っていたのは「月読」。改良を重ねながら、ナゴヤ座オープンの2016年4月からロングランを続けていた演目でした。日本神話の三神と八岐大蛇との戦いを題材にした作品でしたが、当時のナゴヤ座のお芝居は、しっかりとした脚本などはなく、おおまかな話の流れ以外はその場の即興のアドリブで作って行く、東京の舞台観劇に慣れた私には、かなり荒削りに感じるものでした。お芝居中に、いきなりグルグルバットするとは思わなかったし、立ち回り中に木刀を鉄パイプに当ててガンガン鳴らすとは予想もしていなかったので、大変なところに来てしまった…!と震えました。

だけど、面白かったんですよねー。全てを全力でぶつけ合うようなお芝居が、本気で命を取りに行っているような鬼迫の殺陣が。で、まんまとナゴヤ座沼に浸かり始めるのですが、その話は置いておいて。

月読の演目で、サンザさんが、黒い打掛を羽織って舞う場面の色気と、八岐大蛇の毒に操られて仲間を襲う殺陣の見たことのない身体の動かし方に、こんな妖艶な人がいるのか! と衝撃を受けました。

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そして、その後に観た烏天狗のお役(極上ナゴヤカブキの最新作「虎の尾」に登場したあのずるカッコイイブラックヒーローの烏天狗です! ちくさ座を沸き上がらせたそのカッコ良さは、こちらのDVDでぜひご覧ください。https://nagoyaza.thebase.in/items/69835689)を見て、確信しました。サンザさんには妖怪の血が流れていると……

と言いたくなるぐらい、サンザさんには人外の役が似合います。人外ジャンルとしては、やはり日本の妖怪が一番しっくり来ます。強くて知能も高く神として扱われるような、それでいて人と戯れに関わる茶目っ気も持つ。そんな妖怪を演じるのが、サンザさん以上にしっくり来る役者さんはいないと思います。

ご本人曰く「仙人を目指している」そうですが、40歳を迎えて枯れるどころか艶を増した色気を感じるに、やはりサンザさんの到達点は妖怪寄りなものだと思うのです。

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そして…そして…あの伝説の丹下左膳です!

男臭い渋カッコ良さを体現する和製ダークヒーローで在りながら、その命を絞り出すような戦いに、切なさと色香を感じます。墨絵の入った白い着物と赤い襦袢の合わせが、粋と艶の極みです。令和の世に、これほど錦絵に描かれるのが似合いそうな役者さんは、他にいないです。

右目を閉じた状態で、左手一本で刀を振るう(鞘は歯で紐を咥えて抜く)立ち回りを考えたトラザさんも凄いですが、それをやり遂げたサンザさんの立ち回りの凄さを観て、天上天下唯我独尊という言葉が浮かびました。

この世でたった一人にしかできない芝居をする。それは、名古屋山三郎一座の役者さん全員に、もしかしたら、役者として生きている人達全員に当てはまる言葉なのかもしれませんが、サンザさんのお芝居の唯一無二さは、別次元のもののような気がします。そう思わせるだけの、生の魂に触れるような、ビリビリ痺れる鬼迫があります。

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そこから、出会いもあり別れもあり、気付けばナゴヤ座も研修生を含めて12人の大所帯に。

ちくさ座の広い舞台でまさに天上天下唯我独尊のワイヤーワークありのアクションで360度全方位の観客を魅せた孫悟空シェイクスピアの作品を歌舞伎風にアレンジした凄い作品MACBETHの堕ちて魔王となる男の凄まじい生き様を体現した魔苦減須、安倍晴明をライバル視した男がその恨みの力で人外へと変じる姿を関節の動きだけで観せきったSEIMEIの蘆屋道満。サンザさんの魔さえ平らげ己の血肉にして行くような圧倒的な強さ、恐さ、そしてそこから生じる観る者の魂を引き込む妖しい艶は、ナゴヤ座の演目が作品数を増して行く度に、どんどん煮詰められ味わいを凝縮させて行くようでした。

そんな時に、思わぬ方向性で、サンザさんの魅力の新しい扉が開く役を観ました。

座長不在でも新作の公開を迎えられるぐらいに頼もしさを増した一座の中で、あの絶対無二の強者である座長が、男の力に怯えるか弱い姫を演じられたのです。

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Turandotという演目は、オペラの戯曲が元になった作品で、タイトルにもなっているトゥーランドット姫の女性として生きる苦しみや自尊心をへし折られても立ち上がる魂の強さが描かれた物語なので、トゥーランドット姫もある意味ではとても強いのですが、サンザさんの演じる姫は、他の姫達(そうなんです。この演目の頃には、主役も含めた配役シャッフルが当然になっていました。改めて考えると、それだけの力を持つ役者さん達が集まったナゴヤ座ってすごいなぁ)と比べても、一番弱さや幼さを見せていた気がします。

サンザさんが、老人から若者、タイ人留学生(ソムチャイ懐かしいです)、どんな者にでもなれてしまうすごい役者だということは知っていました。骨盤の位置で役作りをするという言葉どおり、立ち姿だけで強者にも弱者にもなれるのが、名古屋山三郎という役者です。

が、ナゴヤ座の中ではやはり、ラスボスのイメージが強かったので、あの座長が少女になった! という衝撃は大きかったです。

以前、サンザさんが「俺の顔は、パーツは綺麗だけど、輪郭ががっしりしてるから、女形演るならサンスケとかの方が似合う」というような発言をしていて、男顔女顔の顔タイプの考え方をしっかり身に付けていらっしゃる…! と驚いたことがあります。その時は、めちゃくちゃ納得したのですが、蓋を開けてみたら、メイク技術でその男っぽさも見事にカバーしていて、白旗を上げました。KATEの6色パレットのポテンシャルの引き出し方がエグい!(褒め言葉です)

座長以外にも、それぞれの魅力で「圧倒的な強者」を演じられる座員さんが増えたからこそ見えたサンザさんの新たな魅力の側面が、この先どう広がって行くのか楽しみです。

勿論、強いバケモノのサンザさんも大好きなので、そういうお役もいっぱい観たいです!

 

お役以外のサンザさんは、昭和の男ってオーラを全身から出されているのに、下戸でお酒は飲めず、お休みの日にお菓子作りしちゃうぐらい甘いもの好き(カスタードクリーム手作りできちゃう上級者!)で、ぼっちで狩りに行っちゃうぐらい苺好き、という可愛い一面もお持ちです。サンザさん版美味しいお顔(眉間に皺を寄せた渋カッコイイ漢の顔)で、あまぁいシロノワール食べたご報告などしてくださるので、ぜひTwitter(@nagoya_sanza)をフォローして、ニコニコしてください。

白目?と二重顎?がクセになる可愛さを持つぽんにゃりネコチャンを描かれたり、猫ちゃん大好きだけどアレルギーで触れなかったりするところも、サンザさんの可愛いポイントです。これは、ネコチャンによく似たウサチャン。

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人離れした美しいお顔立ちと、気風の良い喋り方や、何よりもお芝居の凄さから来る役者オーラで、「怖い」という印象を持たれがちなサンザさんですが、サイン列などでお話しすると、柔和な笑顔でとても話しやすい方です。「凄い!カッコイイ!」という褒め言葉を「だろ?」とストレートに受け止めてくれるところも、ステキです。なので、ナゴヤ座にいらっしゃった際は、ぜひ、サンザさんのサイン列に並んでみてください。より一層、その魅力を感じられると思います!

 

30-DELUXさんのナナシでのめちゃくちゃカッコイイ服部半蔵役でファンの幅を広げたサンザさん、2022年の年末から怒涛の外部出演ラッシュで、今はまた30-DELUXさんのシェイクス2023にご出演中です。ナゴヤ座でも、ナゴヤ座の外でも、名古屋山三郎の魅力の幅をぐんぐん広げていらっしゃるサンザさんのこれからのご活躍が更に楽しみです。

ゴヤ座の座長はすごいんだぞ! って、日本中、世界中に胸を張りたくなる役者さんが、名古屋にいることがとても誇らしくて嬉しいです。芸どころ名古屋のエンタメの熱さを、これからも全身で見せつけてください!

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睫毛、なっが!